京都大学防災研究所 流域災害研究センター
  都市耐水研究領域
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研究内容


社会基盤構造物の地震時動的応答制御手法と免震・制震システムの開発

橋梁をはじめとする社会基盤構造物においては、構造物に作用する地震エネルギーを効率的に低減・吸収する免震・制震装置により動的応答を制御する技術を取り入れることより、耐震性能を効率的に確保した合理的な構造システムを実現することができる。新しい構造物への応用だけではなく、既設橋梁の耐震補強への実際的な適用を視野に入れた、より高度な免震・制震理論の研究や、最先端の免震・制震装置の開発および性能検証を行っている。




     図-1 長大鋼斜張橋用積層ゴムダンパーの検証実験と適用


実時間ハイブリッドシミュレーションによる動的応答制御システムの開発と検証

社会基盤構造物は一般に規模が大きく、実規模の構造全体の試験を行うことには数多くの困難が伴う。そこで、地震時の構造物の応答に支配的な構造要素のみを取り出して振動台や動的加振装置を用いた動的載荷実験を行い、その他の部分については数値シミュレーション計算で応答を求め、実現象に対応した時間軸で両者を結合する動的実験−解析統合手法が、実時間ハイブリッドシミュレーションである。こうした高度な実験手法を実現する実験システムを構築することにより、構造物に作用する地震エネルギーを効率的に低減・吸収する先進的な免震・制震装置の開発における、信頼性の高い性能検証が可能となる。




      図-2 実時間ハイブリッドシミュレーションシステムの例


社会基盤構造物のアクティブ振動制御システムおよびシミュレータの開発と実装

近年の建設構造物は、建築技術の向上に伴う軽量化およびより大きな利用空間の確保のための大スパン化の傾向に伴い、振動問題がより顕在化しやすくなる方向にある。構造振動の問題は、橋梁などの社会基盤構造物、住宅・建物などの構造物の場合では、いわゆる環境振動問題や騒音など、使用性や居住環境の快適性に重大な影響を及ぼす問題となる。この目的のための既存の振動制御手法としては、 TMD 等があるが、地震動への対策としての制振システムのほか、物の落下などが原因となる衝撃的な外力による衝撃加振対策の問題では、幅広い周波数成分を含む加振に対応するためには工夫を要することや、原理的に定常的な性質に乏しい振動の場合には低減効果が限定的であることから、センサなど構造モニタリングの基本技術とアクチュエータ、近年高性能化・低価格化の著しいDSP やFPGA などリアルタイムコンピューティングのための集積回路を活用したコントローラを用いたアクティブ制御の適用が有望なアプローチとして考えられる。 モデルベースデザインを駆使した振動制御系の設計や、並列計算型論理回路設計ツールを用いた動的応答シミュレーターの構築などの技術をベースに、実用的なアクティブ振動制御システムの実装技術の開発を行っている。


    

図-3 並列計算型応答シミュレーターと半導体ロジックデバイス(FPGA)への実装設計


橋梁に作用する津波波力の評価

東日本大震災以降、巨大津波の発生に伴う被害の予測とその低減方策の検討が急務となっています。津波災害発生後の重要な交通インフラとなる橋梁を津波から守るため,橋梁に作用する津波波力を予測・評価する研究を行い,津波に強い橋梁について検討しています。


     

     図-4 橋梁に作用する津波の水面形状と圧力分布の変化


都市特性を考慮した氾濫水理の研究

地下空間を含み、高度・多層に発達した都市域での氾濫水の挙動を研究しています。建物群や道路網、下水道網を考慮にいれた高精度の都市域氾濫解析モデルや、地下街・地下鉄内の浸水過程を表現できる地下空間氾濫解析モデルの開発を おこなっています。また、大規模な市街地模型ならびに地下空間模型を用いた水理実験を実施して、浸水に対する地下空間の危険性を明らかにしています。




          図-5 地下空間のモデル化


現在進行中の研究テーマ

・免制震橋梁の2方向入力による耐震性能照査に関する研究
・制震橋の変位ベース設計法に関する研究
・複数のすべり面を持つすべり支承による構造物地震応答制御
・経年劣化ゴム支承の残存性能の検討
・床衝撃音低減のための制振システムの開発
・実時間ハイブリッド・シミュレーションシステムの開発